原子力発電のマメ知識

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(出典:放射線について考えよう。https://radiation.shotada.com/)

原子の中心にある原子核を分裂、又は2つの原子核を1つに融合させると膨大な熱を発生します。この熱で水蒸気を作り、タービンを回転させ発電機を回します。火力発電のボイラー部分を原子炉に置き換えたのが原子力発電です。

極めて少量の燃料(ウラン235)で膨大な熱を出すうえ、核分裂は燃焼ではないので温暖化ガスの発生もゼロです。

火力と原子力の違い.jpg

(出典:エネ百科|きみと未来と。https://www.ene100.jp/)

核分裂による方法(現在の原子力発電、軽水炉)

原子核に中性子をぶつけると原子核が割れて大きさが同じ数個の別種の原子核になります。ここで中性子が2~3個飛び出し、それが次の原子核にぶつかり核分裂を引き起こす連鎖反応を起こし、その度に膨大な熱を出しながら連鎖が拡大していきます。
しかし、このままでは核爆発となるので、飛び出した中性子を炭化ホウ素などの"制御材"に吸収させて、中性子の数を減らして核分裂を止めたり遅くしたりして制御しています。

  • 注1.軽水とは普通の水に0.01%含まれている質量の重い水D2Oに対して軽い水H2O。要するにただの水。
  • 注2.使用するウラン235の濃度は核爆弾は100%、核燃料は自己分裂を防ぐため3~5%です。

原子力発電のメリット

  • 安いコストで安定した大量の電力を自給できるので、経済性や、原油を諸外国に頼る国の安全保障上有利となります。
  • 地球環境の一番の課題である温暖化ガスの発生がありません(京都議定書やパリ協定以後、現実に発生している地球温暖化は原発事故以上に人類に悪影響ととらえる国が多い)。

日米開戦は米国の対日石油輸出停止がキッカケ。1973年~1980年の第1次・第2次オイルショックを体験したフランスやイギリスは安全保障上重要視。福島事故後もエネルギー自給と経済性からフランス・ロシア・中国・インドなど原発推進国も多いのが現状です。

原子力発電のデメリット

  • 極めて高い危険性
    重大事故が起こると国土全体や地球規模での放射能汚染が発生し、長時間続きます(セシウム137の放射能が1,000分の1になるのに300年、ウラン235では23億年)。
  • 事故の修復が極めて困難又は不可能に近い
    人が近づくことが出来ないため、修復も撤去も極めて困難です(1986年のチェルノブイリ原発事故はいまだに廃炉作業のめどが立っていない。燃料のウラン235の放射能が10分の1になるのは23億年後)。
  • 高レベル放射性廃棄物の処理
    使用済核燃料の処理の際に発生する廃液をガラスに混ぜ個体化し、50年間冷却貯蔵した後も放射能が無害化するまでは10万~100万年もかかります。そのため埋設の受入先が無く、最終処分場の建設の見込みが難しいのが現状です。
  • 原人類の2本足歩行は200万年前。地球が誕生したのは46億年前。
  • フィンランドは原発2基分の廃棄物6,500トンを5,000億円の費用と42kmのトンネルを掘って、極度に乾燥した地下420mに埋める"オンカロ"を建設し、10万年保管する予定ですが、100万年必要との説もあります。
    発電の方法【その5】を参照→
  • 脱原発を打ち出したドイツは、過去の28,000m3の廃棄物の行き場が無い状態です。

国内で使用されている原子炉(軽水炉)

沸騰水型軽水炉(BWR)

原子炉内で水を沸騰させて蒸気を作る方法です。

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(出典:エネ百科|きみと未来と。https://www.ene100.jp/)

加圧水型軽水炉

原子炉内では高温高圧の水を作り、蒸気は別の水で作る方法です。

加圧水型原子炉.jpg

(出典:エネ百科|きみと未来と。https://www.ene100.jp/)

高速増殖炉

軽水炉で使用が終わった核燃料を再処理して発生するプルトニウムを燃料とする発電方法です。重量当りの発熱が極めて高い上、使った量以上に量が増えるので「夢の発電方法」と考えられていました。
日本では実験炉「常陽」を基に原型炉「もんじゅ」を建設し、30年の時間と1兆円を投じましたが、冷却の難しさから延べ100日間で稼働停止、2016年に廃炉と決定しました。
しかし、廃炉作業が困難なうえ、3万トンの廃棄物の処分先も無いため、毎年200億円の保安費用をかけながら現状維持の予定です。一方、日本政府はフランスが進める次段階の高速実証炉「アストリット計画」に参加しましたが、2019年、当のフランスが技術的困難さと巨額の費用のため契約を放棄したので、日本は第2のもんじゅの計画を独自に立てています。

経済発展が急務の中国・インド・ロシアは、重要なエネルギー源として今世紀半ばの実用化を目指しています。

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(出典:Wikipedia)

発電の方法