家庭電化の歴史(あかり編)

1880年代、スイッチ一つで回る電動機(モーター)や、灯油ランプの50倍の明るさの白熱電球が実用化されると、電気は一挙に普及しました。
中でも明かりはツタンカーメンの王墓から燭台が発見されたように、人々は闇夜を照らす明かりを熱望していたのです。

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ザイール共和国の国旗(のろし:古代の照明用)

照明器具

古代~中世~江戸時代

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当時のオイルランプ(出典:Pickaway)

明かりの燃料は 木→動植物の油脂→ろうそく(奈良時代)→石油→ガス(明治時代)→電気と変遷してきました。

古代

動植物の油脂から作ったろうそくは、たいへんな貴重品であり、王族しか使えない物でした。奈良時代(722年)に仏教の伝来とともに輸入され、室町時代(1300年代)にはうるしの木から国産化されましたがまだまだ貴重品で、貴族が特別の日に使うものでした。

江戸時代

江戸時代に入ると木蝋の原料となる「はぜの木」が琉球から伝わり、和蝋燭の生産が増えましたがそれでもまだまだ高価で、1本のろうそくの値段は今の2~3万円もしました。
そのため、価格の安い動植物の油から作った灯油(ともしあぶらと読む)を使いましたが、これも一升当たりの値段が米の2~4倍もして、気軽に使えるものではありませんでした。

18世紀後半、産業革命による石油化学の発達で、パラフィンで作るろうそくが工業的に大量生産され日本にも輸入されましたが、これも贅沢品でした。
当時の庶民にとっては煮炊きと暖をとる囲炉裏(いろり)が唯一のあかりでした。

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行灯(あんどん)で手紙を読む(明治時代)(出典:Wikipedia)

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葛飾北斎画(江戸時代の油売り)(出典:探検コム「江戸ガイド」)

明治・大正時代

石油ランプ

それまでの行灯あんどんから石油ランプに急速に変わった時代です。

幕末の開国とともに入ってきた石油ランプは行灯の10倍の明るさで、石油の値段は菜種油の半分ででした...とは言っても高価なものだったので、皇居でも最初の一燈は明治5年でした。

明治末期までにはかなり普及しましたが、それでも庶民には家に一燈あれば裕福といえるものでした。全盛期は大正時代でした。

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明治時代のランプ(出典:江戸東京博物館)

ガス燈

日本では1850年頃にコールタールから発生したガスを灯火した記録があり、大名の島津斉彬なりあきらは庭園灯として点灯しましたが、一般的には1872年(明治5年)の横浜馬車通りの街路灯が最初と言われています。

その後電灯の普及と共に衰退していきますが、電力不足による停電が連日のように続いた昭和20~30年代に、電球入手の困難さもあって、家庭用卓上ガス灯が再登場したこともありました。

明治末期までにはかなり普及しましたが、それでも石油ランプ以上に高価で、主に街路灯や門灯として使用されますが、電灯の普及によって姿を消しました。

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1871年大阪造幣局のガス灯(出典:Wikipedia)

白熱灯

1878年(明治11年)3月25日(後の電気の日)虎ノ門にあった工学大学校(今の東大工学部)で日本初のアーク灯が点灯しました。
翌年エジソンが京都の竹を使って白熱電球を実用化し1881年に発売しました。
1882年(明治15年)電灯の有用性を人々に広めることを目的に、銀座でアーク灯が点灯されその明るさは人々を驚かし、電灯普及のきっかけとなりました。

当時の電力会社との契約は使用燈数制で電球は貸付け、料金は10W1灯で今の3~4万円でした。
したがって家に電球が1個しかないのは普通で、長いコードを付けて持ち回りに使っていました。
村はずれの一軒家や山奥の集落まで電気が届いたのは1965年(昭和40年)頃のことです。明治大正時代の大邸宅に吊るされているシャンデリアがいかに贅沢品だったか解ると思います。
普通の家で廊下や便所にまで照明器具がつくようになったのは1950年(昭和25年)代以降のことです。

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再現された銀座のアーク灯
(出典:銀座経済新聞)

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このような電球を部屋各々持ち歩いた
(出典:瀧澤商店)

昭和・平成時代

蛍光灯

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レトロな蛍光灯(出典:Wikipedia)

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さまざまな蛍光灯(出典:フォトハチログオークションより)

1937年、米国で発売され、1941年には日本でも東芝が発売。1953年、環形ランプの出現とその明るさから一気に普及しました。
1990年代には、さらに高効率化が進んだ「Hf型」も出現しましたが、2019年、政府の「エネルギー基本計画」により、照明器具のLED化が進められ各メーカーは生産を中止しました。

水銀灯(放電灯)

1901年、蛍光灯より早く発明され、その大光量と効率の良さから色を問題としない屋外や工場用として色々なタイプ(ナトリウム灯・マルチハロゲン灯)に発展しましたが、2017年の「水銀に関する水俣条約」により各メーカーは生産を停止し、現在はLEDランプへ移行しています。

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(出典:岩崎電気)

LEDランプ(発光ダイオード)

1962年、ゼネラルエレクトリックのニック・ホロニアックによって赤色が発明され、1972年に黄緑色1990年代に青色LEDが発明されたことにより3原色がそろって白色光を作ることが可能になりましたた。

大量生産出来て、長寿命(4万時間)なうえ、デザインの自由度も高いので、今ではあらゆる分野に使用されています。

一方、内部では直流で動作するため、整流用電源部分が必要でありこの部分の寿命はLED程では長くなく、発熱や耐雷性などにも考慮が必要です。

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(出典:東芝ライテックカタログ)

電化製品の歴史