パーソナルコンピュータの歴史

パーソナルコンピュータの出現

コンピュータと言えば、「マイコン」として個人にも浸透しつつありましたが、複雑なコマンドを打ち込んでプログラムを起動するCUI(キャラクタ・ユーザーインターフェース)が一般的で、誰でも扱えるものではありませんでした。
一人に一台、個人で所有し、誰でも簡単に使える本当の「パーソナルコンピュータ」への需要が高まってきます。

そんななか1973年、当時ゼロックス「パロアルト研究所」に所属していたアラン・ケイが提唱した「ダイナブック構想」に基づいた「Alto(アルト)」プロジェクトが産声を上げます。
アラン率いるチームは、コンピュータがもっと誰でも使用されるようになる未来を思い描き、このプロジェクトを推進していきますが、当時のゼロックスはこのAltoの価値に無関心でした。

コンピュータは「大型」で「大口顧客」に「高価格」で納入する方が利益になると感じていたからでしょう。上層部へのプレゼンテーションも失敗に終わり、チームはひどく落胆します。

しかし、皮肉なことに「ダイナブック構想」の継承者はゼロックスからではなく、Appleのジョブズ、Microsoftのゲイツ、次のコンピュータ業界を担う二人へと受け継がれていくのでした。

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縦型ディスプレイ、キーボードとマウスを備えた「Xerox Alto」
(出典:Wikipedia)

MS-DOSが変えたパーソナルコンピュータの世界

1981年、パーソナルコンピュータの高まりに、コンピュータ業界の巨人「IBM」も抗うことは出来ませんでした。自社ですべて行う慣習があったIBMですが、汎用コンピュータは得意でも、小型で性能に制限のある個人向けコンピュータに搭載するOSの開発は遅々として進みません。そこでオペーレーションシステムを社外から安く買うことを決定します。そのとき白羽の矢が立ったのがビル・ゲイツポール・アレンが立ち上げた「マイクロソフト」でした。

納期に余裕のないマイクロソフトは、シアトルコンピュータプロダクツが他のマシンで使用する予定だった「QOS」を当時としては破格で購入し、「MS-DOS」として、IBMに納入します。

IBMは「MS-DOS」を自社以外のマシンでも利用可能な契約としたため、MS-DOSは「IBM-PC互換機」と呼ばれる様々なメーカーのPCにインストールされるようになり、現在のマイクロソフトの躍進が始まります。

ちなみに「MS-DOS」のDOSとはディスクオペレーションシステムの略で磁気ディスクからの読み込みを可能にしたOSと言う意味です

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Macintoshが変えたグラフィカル・ユーザー・インターフェース

二人のスティーブ、「スティーブ・ジョブズ」と「スティーブ・ウォズニアック」が自身のガレージで立ち上げたアップルは、1975年、「Apple I」を発売します。むき出しの基板の組み立てキットは、次のマシンの開発に必要な資金をもたらす十分なヒットをします。

コンピュータの潜在的な市場の存在を確信したジョブズは一般的な家庭でも使えるコンピュータとして、1977年、電源を入れただけですぐに使える真のパーソナルコンピュータ「Apple II」を発売します。豊富なアプリケーションとフロッピーディスク、外部ドライブ、メモリーなどの拡張性が高かったため、総計500万台が生産されるベストセラーになります。

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Apple I(1975年発表)
(出典:Wikipedia)

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AppleII(1977年発表)
(出典:Wikipedia)

1979年、前述ゼロックス「パロアルト研究所」を訪問したジョブズは「Xerox Alto」のデモ機に衝撃を受けます。早速Appleに帰ったジョブズはプロジェクトを発足。当初、ジョブズの娘の名前を冠した「Lisaプロジェクト」と「Macintosh」の同時進行の開発でしたが、やがて「Lisaの廉価版=Macintosh」といった形で収束。1984年「Macintosh」が発売されます。

「CUI(キャラクタ・ユーザー・インターフェース)」と呼ばれるキーボード入力が主体のこれまでのコンピュータとは異なり、ほぼすべての操作をマウスとキーボードで行う「GUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)」は当時どのコンピュータとも似ていない画期的なものでした。

ウィンドウシステム、ゴミ箱の概念、各種アイコンなど視覚的な操作インターフェースに加え、文字フォントの美しさ、印刷物と画面の相違のなさなどから、当時主流になりつつあった、コンピュータでの書籍編集(DTP:デスクトップパブリッシング)を行うデザイナーやクリエーターからの絶大な支持を得ることに成功します。

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初代Macintosh(1984年)(出典:Wikipedia)

Windowsの快進撃

Macintoshに衝撃を受けたのはMicrosoftも同じでした。遅れること6年、Windows1.0〜2.0の失敗を教訓に1990年「Windows3.0」が発売されます。
グラフィカルユーザインタフェース(GUI)、様々なソフトウェアを同時に立ち上げることが可能な「マルチタスク」がセールスポイントでした。
3.0で不評だった部分を改良し3.1としてリリースし、世界的なヒットとなります。

デザイナー、クリエータ指向の強いAppleと違い、エクセルやワードなど、より実務的なソフトに重きを置いた戦略、またゲームにも積極的にサポートしたため、ビジネスもプライベートも使えるOSとして市民権を得ていきます。

そして1995年、これまでのデザインを一新したWindows95が発売されます。

不安定だった要素を徹底して改良し、ネットワーク接続の利便性を高め、新しいインターフェースとカラフルなデスクトップは過去最大の売り上げを記録します。

パソコン通信の時代を経てインターネットが一般的になると、Internet Explorerを組み込んだWindows 95 OSR2へと進化。

同時に当時広がりつつあった「USB」にも対応。そして1998年、Windows 98の発表でWindowsOS帝国の体制は盤石なものになります。

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Windows1.0(1985年)の起動画面(出典:Wikipedia)

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Windows95(1995年)の起動画面(出典:Wikipedia)

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Windows Me(2000年)の起動画面(出典:Wikipedia)

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Windows 1.0(1985年)不具合が多く評判は散々だった
(出典:Wikipedia)

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Windows 3(1990年)3.1から安定して動作するようになりヒット

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Windows 95(1995年)発売と同時に大ヒット。徹夜で購入する人も...

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Windows 2000(2000年)堅牢なNTカーネルを基に開発されその後のWindowsOSの基礎となる

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Windows XP(2001年)安定性とマルチメディア対応が進化。安定さゆえにWindows10への乗り換えが進まない要因となった

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Windows Vista(2006年)Windows Aeroなどの意欲的なOSだったが、マシンスペックの要求が高くXPからの乗り換え需要にはつながらなかった

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Windows 8(2012年)デスクトップ環境を一新。タイル配置やスペック不足による挙動の不安定で人気は今ひとつ

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Windows 10(2015年)デスクトップUIを再度変更、安定性の向上と永続アップデートでセキュリティ強化

Appleの復活劇

初代Macintoshの成功により当初5万台を売るヒットとなったジョブス率いるAppleでしたが、低価格なWindowsマシンの勃興、対応ソフトの不足や高価格などから徐々に売り上げを落としていきます。ジョブスと当時の経営陣との関係も悪化の一途をたどり、1985年、ジョブスは自分が立ち上げたAppleから去ることになります。
その後、過剰な在庫や新鮮味のない商品ラインナップなどの理由からAppleの経営はだんだんと悪化していき、ライバルマイクロソフトとの差は開く一方でした。

一方Appleを去ってからのジョブズは、自身の会社「NeXT」を立ち上げ、ジョージルーカスが立ち上げたCGアニメの会社「ピクサー」を買収など幅広く活躍。
そして、1996年、業績不振に陥っていたAppleに自身の会社NeXTを売却すると同時にCEOに復帰します。

アップルに復帰してからのジョブスは、マイクロソフトからの資金提供とMac版のOfiiceやInternet Explorerの提供を受けるなどで業務提携。
利益率の改善と社内改革でAppleの再建を果たします。

1998年にはコンピュータの概念を打ち破るスタイリッシュな初代「iMac」をリリース。音楽プレーヤー「iPod」の発売、そして携帯電話に革命をもたらす「iPhone」 を発売し、【時価総額2兆ドル(210兆円)】の現在のアップルを生み出します。

音楽をダウンロードして楽しむことを当たり前にした「iTunes」、タブレット端末を広く一般化した「iPad」の発売など、精力的な活動を牽引してきたジョブズですが、2011年膵臓がんの転移によりこの世を去ります。


「Stay hungry, stay foolish.」
2005年スタンフォード大学の卒業式でのスピーチ。
このとき既に病魔はジョブズの身体をむしばんでいます

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初代iMac 1998年
(出典:Wikipedia)

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iPod 2001年(出典:Wikipedia)

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iPhone(2007年)とジョブズ(出典:Wikipedia)

パーソナルコンピュータからパーソナルデバイスへ

アップルが生み出したiPhoneは瞬く間に世界中に浸透し、同時に沢山の追跡者を生み出します。

2007年、GoogleはAndroid OSを発表。オープンソースで誰もが自由に開発できるようにしたため、日本をはじめ、中国や韓国からもバリエーション多彩で、しかも安価な端末が次々と発売され、スマートフォン全体の75%のシェアを占めるようになります。
そして2021年現在、人口あたりのスマホ普及率は90%を越えるまでに至りました。

スマホにインストールして使うアプリもiOSだけで210万本を超えます。
デスクに陣取り、モニターを眺める「パーソナルコンピュータ」から、自分の好きなところで好きなだけ楽しむ「パーソナルデバイス」へと進化しました。

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(出典:Wikipedia)

パーソナルデバイスからウェラブル〜そしてインプランタブルデバイスへ

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インプランタブルデバイスへの流れ(出典:NTTコムウェア)

パソコンやスマートフォンのように「持ち運ぶ」のではなく、「身に着ける」ことで利用することができる端末をウェラブルと言います。
アップルウォッチをはじめとした腕時計やVRゴーグル、Bluetooth イヤホンなどがそれにあたります。自動車のカーコンポやナビの代わりに使うApple CarPlayやAndroid Autoもウェラブル端末と言えるのかもしれません。
体内埋め込みのインプランダブル端末の実用化もすぐそこまで来ています。

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音楽再生だけでなく、ノイズキャンセリングが集中度やリラックスなどの生活環境を整えてくれます
(出典:Wikipedia)

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スマートウォッチは心電図などヘルスケア用途が高くなりました
(出典:Wikipedia)

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ゲームだけで無く拡張現実を使った様々なサービスが期待できるAR/MRなどのサービス
(出典:Wikipedia)

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ナビゲーション、カーコンポが装備されないクルマが増えてきました。キーの代わりになるアプリも実用化が進んでいます
(出典:Wikipedia)