鉄道の技術

トロリー線への給電

直流1500V区間を10両編成の電車や電気機関車が走るには5000Aもの電流が必要です。
この時の1.5km先のトロリー線(0.1Ω/km)の電圧は750V(元々モーターの端子電圧は750V又は375V)2.25km先で375Vとなり、この先に進めないため、トロリー線への送電には色々な工夫がしてあります。(市内電車の使用電流は300A前後、変電所は10km毎に設置)

交流電化は架線電流を少なく(1/10程度)することが目的です。

き電線による方法(市電や小私鉄)

吊架線.png
トロリー線と平行に太い電線(き電線)を張り数百mごとにトロリー線に給電

トロリー線.png
列車本数が少ない路線(吊架線をき電線に使う場合もある)
(出典:yj2

エアセクション(列車本数の多い路線)

5~10kmごとに変電所を設けてトロリー線(き電線)へ送電

エアセクションによって変電所単位でトロリー線を絶縁し、停電作業中でも他の区間の運転を可能にすると共に架線短絡事故時の変電所遮断器の動作を確実にする。
前記桜木町事故ではエアセクションが無かった為、直近の変電所の遮断器は動作するも遠方変電所の遮断器は事故電流と認識出来ず送電を続け大惨事となった。

エアセクション.png

Ⓐ,Ⓑのトロリー線に電位差がある為パンダグラフで両方を短絡すると大電流が流れ、トロリー線とパンダグラフの接触抵抗の発熱(ジュール熱)により溶断するので停車・徐行は禁止されており、トロリー線温度が上昇しないよう電車は高速で惰行通過している。

パンタグラフ.png

デッドセクション

交流50/60Hzや直流との切替区間で電源が混ざらない様に無電圧のトロリー線が張ってあり、列車は電源を切ってこの前後区間を惰行運転しながら電源切替を行う。

レールも絶縁してある。(信号制御電流通過用にインピーダンスボンドが設置してある。)

新幹線 デッドセクション.png

交流50Hz同士でも変電所が違うと位相が合わないので必要になります。
新幹線では1km程の中間セクションを走行中に後ろから進行方向後の変電所に真空開閉器を使って0.05秒の時間差で電源を切り替えています。

デッドセクション.png


えちごトキめき鉄道デッドセクション.JPG

えちごトキめき鉄道のデッドセクション 日本海ひすいライン 糸魚川(交流)~ 梶屋敷(直流)間
(出典:Wikipedia)

鉄道の省エネ(インバータ化)

抵抗器による出力調整

抵抗器図.png

抵抗器.png

(出典:JR東日本)

  • モーターと直列に入っている抵抗器を変えて出力を調整
  • 発生する熱は空中へ放熱する
  • 抵抗が消費する電力の方が多い

回生ブレーキ

減速時モーターを発電機として使うことによって減速エネルギーを電力に変えてトロリー線へ送電します。

回生ブレーキ1.png 回生ブレーキ2.png

(出典:JR東日本)

半導体の進歩

鉄道の高圧・大出力の必要性が半導体の高圧・大電流・高出力化を促進しました。

その後家電品の省エネ化や超高圧直流送電などに応用されていきました。

vvfインバーター.png vvfインバーター2.png

(出典:JR東日本)

半導体整流素子の大きさ

SISインバーター.jpg

SiCインバータ素子(三菱電機6.5kV耐圧フルSiCパワー半導体モジュール)

SISインバーター回路.gif

SiCインバータ用素子のブロック図

鉄道と電気