電気と鉄道電化の歴史

鉄道への電気の利用

鉄道用車両と電気モーターの相性の良さ

動力源の変遷

365日世話が必要な「馬」から、数時間前に火を入れれば動き、大量の煙と火の粉も撒き散らすものの大馬力の「蒸気機関」へ、さらに小型でも大馬力で「スイッチON」ですぐ動き、煙も出さない電動機(モーター)へと進展しました。

(構造が複雑なエンジンと変速機を使う気動車は保守手間がかかる為、電気が主流となりましたが、近年エンジン・発電機・電気モーターの単純な構成の車両が非電化路線用に開発されました。)

電気モーターの特性

電気モータは回転数が低い程、発進・加速力(トルク)が強く、高速(空転)で弱くなり、逆に外から軸を回すと「減速」と「発電」する性質は、摩擦係数が小さくて発進時に空転しやすく制動時間の長い、鉄道にとって好ましい特性でした。

さらに機械的往復動作が無いので信頼性が高く、振動も小さい為、最上の動力源と言えます。
(レシプロ機関のエンジンや蒸気ピストンは、回転運動のガスタービンや蒸気タービンに進化して大馬力・高信頼性になりました。)

技術向上が与えた、他分野への影響

1960年代からの小型・軽量で高圧大電流の部品が必要な構成の電車の開発は、半導体や変圧器の性能を飛躍的に高めました。

また、27.5万V直流送電をはじめ、モータの回転速度などを無段階で連続的に変化させる「コンバータ回路/インバータ回路」は産業機械から、エアコンや冷蔵庫などの家庭用電化製品へと幅広く利用されています。

馬車鉄道の電化

明治時代の最盛期、全国で41箇所、総延長260km、年間800万人、30万トンの輸送するものの、馬糞や火の粉の発生しない発生しない市電に替わっていきました。
東京馬車鉄道→東京電気鉄道
函館馬車鉄道→函館市電

明治中期以後開業した京都・横浜・富山などは初めから電気の市内電車です。

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東京市電(大正12年)
(出典:城北信用金庫 Tram Walker)

戦前の電車

国産初の電気機関車

第一次大戦(1904年~1918年)による部品の輸入困難と技術の向上もあり、信越本線のアプト式区間である横川 - 軽井沢間(碓氷峠)用の電気機関車として、初めて全部国産のアプト式電気機関車ED40形が開発されます。その後ED40形は1919年(大正8年)から1952年(昭和27年)まで使用されました。

碓氷峠の11kmの急こう配を下り続ける為、速度抑制ブレーキはブレーキ本体で発熱しない「発電ブレーキ」を採用し、発生した電力は抵抗器で空中に放熱しています。
また、三相交流6600Vから回転変流器で直流600Vに変換しています。

登坂中の機関車へのピーク電力対策として、1927年、ようやく国産化された水銀整流器とバッテリーの組み合わせが使用され、さらに1960年代以降はサイリスタなどの半導体へと進化しました。

一方、新幹線時代の今でも碓氷峠越えは難問で、E7系しか走れません。

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鉄道省10020形電気機関車(のちのED40形)(出典:Wikipedia)

通勤用電車(1944年~1951年)

写真の全長20mの通勤用大型電車63系は、片側4扇通勤輸送の標準型となり、大戦後大量に作られた画期的な車両でしたが、物資の無い時代の極めて粗悪で不完全な車両だった為、のちに電気が原因で焼死者106名 負傷92名の「桜木町事故」を引き起こしました。

電気工事作業員が落としたスパナが鉄柱とトロリー線を短絡、溶断し垂れ下がったトロリー線が電車の屋根に接触、数千アンペアの電流が流れるも変電所の遮断器は動作せず火花を出し続け、内装が木製の車両はすぐに全焼。乗客が自分では脱出できない設計だったため、国鉄五大事故に数えられる大惨事となります。

以後、変電所も含めた電気系統の技術が大きく進歩し、これらの技術も他分野へ応用されていきました。またこの事故がきっかけで車内の目立つ所にドアコックが付くようになりました。

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63系電車(1947年頃・池袋駅)(出典:Wikipedia)

高性能電車への進化

新性能電車

101系~209系へ(1957年~1993年)

運転時隔の短縮で輸送力を増強するため、モーターの出力重量比を2倍に、発電ブレーキも併用し加減速力を強化するなどして、駅間30秒短縮、6年後の103系では、トロリー線の容量不足の為、25%の省エネ化を図ります。

201〜205〜209系と進むにつれ、電力回生ブレーキやVVVF(可変電圧可変周波数)制御が実用化され、直流電源から3相交流を作り構造が簡単な「3相交流モーター」で走っています。

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101系(出典:Wikipedia)

231系~235系へ(2000年~2015年~現在)

コンピュータの最新技術を利用した次世代車両制御システムを搭載し、省エネ運行やブレーキ・車両機器の状態監視から乗客サービスまでコントロールして、無線で地上設備へデータ伝送を行う「走るコンピュータ」と言えるような完成度です。

山手線では使用する電力の60%を減速中の電車の回生電力で賄う程、効率が良く、動力性能や騒音・乗り心地なども一新された仕上がりとなっています。

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235系(出典:Wikipedia)

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サハE235-1の線路設備モニタリング装置
(出典:Wikipedia)

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モハE235-3の架線状態監視装置
(出典:Wikipedia)

交直共用電車・機関車等

電気機関車

1955年代、車両側に搭載した変圧器で降圧できる「交流2万V」の方が「直流1500V」より大電力を送電でき有利とされた為、北陸本線など全国の幹線電化は交流2万Vで実施されました。

その結果、直通列車は交流2万Vの50Hz、交流2万Vの60Hz、加えて直流1500Vの「3電源」への対応が必要となり、50/60Hz共用小型変圧器や、手のかからない高圧大電流半導体整流器の開発を促進しました。

写真は3種類の電源区間である函館~大阪間の特急列車「日本海」を直通で引っ張った3000馬力機関車です。

旅客車

変圧器や整流器の小型軽量化が進展し、直流・交流50/60Hzの3電源区間を直通できる特急用電車が完成します。2万V交流を直流1500Vにして直流モーターで走行します。基本は直流電車。

写真は交流50Hzー直流ー交流60Hzの3電源区間を走る、青森ー大阪間特急「白鳥」。以後気動車特急列車は電車に代わっていきます。

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EF81 137 3電源共用型(1968年)(出典:Wikipedia)

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E485系 交直両用電車(1964年)(出典:Wikipedia)

新幹線

初代0系(1964年)

1957年航空技術の応用など、最新の技術で作られた「小田急特急SE3000型」が世界最速の時速145km/h、翌58年には「国鉄151系」が163km/hを出しました。 この技術をベースに、先の交直整流技術を改良強化して、時速200kmの「0系新幹線車両」が完成します。

運転室内信号表示・自動停止・指令室パネルへの現位置表示など、電磁気による安全運行システムは特筆される開発技術でした。12両編成で750トン12000馬力・電力10000kw・乗客987名の走る変電所みたいなものでした。モーターは直流415V・出力185kw(250馬力)でした。発電ブレーキは使用していますが、発生した電力は放熱するだけで、まだ電力を再使用する技術はありません。

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0系新幹線
(出典:Wikipedia)

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小田急特急SE3000型
(出典:Wikipedia)

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国鉄151系
(出典:Wikipedia)

E7系 2014年 北陸新幹線用

E7系 2014年 北陸新幹線用(50/60Hz共用の碓氷峠対策車両)

1992年登場の300系以後の車両は旧来とは根本的に異なり交流モーターで走っています。

ブレーキ時にモーターで発生した3相交流は周波数と電圧を整えてトロリー線へ返します。

  1. 東海道新幹線は開業当時50/60Hz共用技術が無かったので全線60Hzです。
  2. 秋田新幹線は在来線を走るので2万Vと2万5000Vの電圧共用50Hz車両です。
  3. 新幹線の最高速度
    • 東北新幹線320km/h (360km/h 車両開発中です。)
    • 山陽新幹線300km/h 東海道新幹線 285km/h
    • 北陸・北海道新幹線 260km/h

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E7系(2014年)北陸新幹線用(出典:Wikipedia)

図(E7系).png

回生ブレーキの仕組み

リニアモーターカー

磁石のN-S極の反発と引合力を利用し、車両のスピードに合わせて地上コイルの極性を変えて(可変電圧可変周波数交流)加減速します。

  • 列車に運転手は乗車せず、側壁に組み入れたコンピュータで周波数制御されています
  • コイル磁石によって浮上・走行しています(列車の速度と同期を合わせる技術が必要です)
  • -270℃程度に冷却すると電気抵抗が0Ωになる(超電導)電線でコイルを作り、最初に電流をちょっと流すと、電流は永久に流れ続け無限大に強力な磁石を作ります。この磁石を車両に搭載しているのがリニア中央新幹線です。車載の冷凍機を動かすためには電源が必要で当初は発電機を載せました
  • リニアモーターを使い浮上せずに車輪で走る鉄道は急勾配や急カーブに有利な為、地下鉄大江戸線・横浜・大阪メトロで採用されています

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超電導リニアL0系(2015年に山梨実験線にて世界最高速度603km/hを記録)(出典:Wikipedia)

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車両のスピードに合わせて地上コイルの極性を変え(可変電圧可変周波数交流)加減速します

図(リニア浮上の原理).jpg

側壁の浮上磁石の反発力・引力で浮上します。同様に案内磁石で車両のセンターを保持する仕組み

図(リニア進行の原理).png

列車がコイルを通過するときだけ電気を送ります

これからの鉄道車両(環境配慮CO2排出抑制)

ハイブリッド気動車

キハE200(2007年)

ディーゼルエンジン・発電機・バッテリーの組み合わせで3相交流モーターを回します。減速時にはモーターは発電ブレーキとなりバッテリーに充電する
(「日産ノート e-POWER」と同じ型式)。

ハイブリッド気動車キハE200.jpg

(出典:Wikipedia)

直流電池駆動車・交流電池駆動車(いずれもエンジンは無い)

EV-E301系(2014年)直流区間用

通常は直流1500Vで走行しながらバッテリーに充電、非電化区間は630Vのリチウムイオン電池。VVVFインバータを使用し交流3相モーターを回して走ります。

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EV-E301系(出典:Wikipedia)

BEC819系(2016年)JR九州

通常は交流2万Vで走りながら充電し、非電化区間はバッテリーで走る車両(JR東日本の50Hz用はEV-E801系となります)。

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BEC819系(出典:Wikipedia)

次世代燃料電池車

FV-E991系(2022年3月予定)

JR東日本・トヨタ・日立の3社で開発中の次世代燃料電池車。トヨタの燃料電池自動車「ミライ」の鉄道版です。横浜市の鶴見線・南武線で22年3月から運行開始予定です。

ハイブリッド車両の仕組み.jpg

FV-E991系.jpg

HYBARI(ヒバリ)の外観イメージ(出典:JR東日本)

鉄道と電気