電気の歴史 世界編

古代の電気

紀元前600年(2600年前)ギリシャの哲学者"タレス"が琥珀(植物樹脂 松ヤニなどの化石)を布でこすると、ホコリや羽根などの軽いものを引きつけることに気づきます。
この事が電気に関する歴史上の最初の記述でですが、静電気が発生したとまでは解っていません。琥珀の古代ギリシャ語"elektron"がエレクトロン・エレクトロニクス等の単語の語源になりました。

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【コハクとは】 数千万年~数億年前、地上に生えていた樹木の樹脂が土砂などに埋もれ、化石化したものです。
樹脂とは、マツヤニのように木から分泌される液体で、固くて透明なガラスのような物質です。

その他の記録

  1. 東洋では中国の本「呂氏春秋」に「慈石召鉄」との記述があり、現在の「磁石」に当たります。
  2. 日本では「続日本紀」の和銅6年(713年)の記述に、「近江国(現在の滋賀県)より慈石を献ず」とあります。
  3. マグネットの語源
    羊飼いの少年"マグネス"が、不思議な石を発見したところからの説と、トルコ南端のエーゲ海近くにあったとされる磁石の産地"マグネシア"の地名からの説があります。

電気の原理の発見

タレスの時代から2000年間、まさつ電気研究の進展はありませんでしたが、1600年(日本では関ヶ原の戦いの時代)イギリスの学者"ウィリアム・ギルバート(コペルニクスの地動説を早くから支持、論理的だった)"が実験を用いた近代的手法で静電気を解明。電気や磁気を理論的に考えるきっかけとなりました(検電器を発明)。

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出典:中京テレビ
でんじろう先生のはぴエネ第189回

1752年アメリカの"ベンジャミン・フランクリン(1776年のアメリカ独立宣言の起草委員5人の1人)"が雷が静電気であることを凧揚げ実験で証明します。
死んでしまうような危険な実験であること、当時の凧では雷雲まで揚がらない、自説の正しさを強調するためにやってみせようかと話しただけ......など説もありますが、以後、電気の理論が大きく進むきっかけになります。

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雷が電気であることを証明する為に使ったライデンびん.png

雷が電気であることを証明する為に使ったライデンびん
(出典:中国電力 電気の歴史)

電気理論の発展(18世紀中頃~19世紀の産業革命と同時進行)

稲妻が電気現象であることの証明は、後の電気に関する科学者達に大きな影響を与えました。

1785年 クーロンの法則
磁石には2つの異なった極があり、同じ極は反発、異なる極は引き合う現象を発見。
1800年 ボルタの電池
ボルタが電池を発明。以後、電気実験が容易になります。(原理は1777年)
1826年 オームの法則
オームが電流(A)、電圧(V)、抵抗(Ω)の関係を示す公式を発見します。
1831年 電磁場理論
マイケルファラデーが電流と磁気の相互作用を発見。後の研究の基礎となる発見で、翌32年、スタージャンが実用モーターを発明します。
1861年 電磁気学の基礎方程式
マックスウェルがクーロンやファラデーの実験を基に、電気理論の方程式を確立。
光も電磁波と予想します。
1884年 フレミングの法則
ファラデーの電磁場理論を左右の3本の指を使って学生に解り易く説明しました。

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出典:https://kagakuhannou.net

1888年 電磁波を実証
ハインリヒ・ヘルツが火花放電の実験で電波の存在を実証。無線通信への道を開き、後に1895年マルコーニ(イタリア)が無線電信に成功します。

電気実用化の時代

電気が理論的に解明されると、産業革命の進行に合わせ、動力や照明、通信目的の電気の実用化の時代へと進みます。

実用機器の発明と発達

1832年
ヒポライト・ピクシー(フランス)が最初の交流発電機を製作。実用にはなりませんでしたが、以後の電動機や発電機の発明につながります。
1834年
トーマス・ダヴェンポート(アメリカ)が実用直流モーター完成。
1851年
電信用海底ケーブルが英仏海峡に敷設されます。
1866年
ジーメンス及びグラム(ドイツ)によって実用発電機が完成。これが電力技術発展の基礎となります。
1871年(明治4年)
インド洋経由とシベリア経由の2系統の海底ケーブルで、日本とヨーロッパがつながります。
1876年
グラハム・ベル(アメリカ)は発明王エジソンのカーボンマイクを利用した電話器を発明。グレイより特許出願が2時間早かったので「電話の発明者」と呼ばれています。
1882年
トーマス・エジソン(アメリカ)は1800年代中頃、イギリスのジョセフ・スワンが発明した白熱電球をフィラメントに京都の竹を使って実用できるよう改良しました。フィラメントの必要がないアーク灯は1815年、イギリスのデービーが発見(ボルタの電池2000個を使った)しましたが、寿命が短いこと、明る過ぎるなどの理由で家庭用には不向きでした。
1897年
JJ・トムソン(イギリス)が電子の存在を確認。放射能の発見と並んで20世紀の原子物理学の出発点となります。
1906年
3極真空管の発明により、ラジオテレビ発達の基礎となります。
1920年(大正9年)
アメリカでラジオ局開局。
1939年(昭和14年)
アメリカでテレビ放送開始。
1954年(昭和29年)
ソビエト連邦が出力5000kwの原子力発電所を運用開始。

その他の科学技術の発見(人・馬の力から機械力へ)

1769年
ジェームス・ワット(イギリス)が、トーマス・ニューコメンの発明した蒸気機関を改良し実用化。その結果、産業革命が大きく前進しました。
1804年
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ロコモーション号
(出典:Wikipedia)
R・トレビック(イギリス)が時速6kmの蒸気機関車を完成。その後、G・スチーブンソンがさらに改良。1825年、実用鉄道として営業開始。「ロコモーション号」は80トンの石炭を時速39kmで牽引できました。

この間に電気理論が大きく発展し、1832年ピクシー(フランス)が最初の発電機を製作
34年には米国で実用できる直流モーターが完成しています。

1885年

カール・ベンツ(ドイツ)が現在と同じ機構の4サイクル実用エンジンを完成。最初から自力走行できる3輪自動車を走らせます。翌年ダイムラーも4輪車を完成。後年二人は合併して、現在のダイムラー・ベンツ社となります。

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パテント・モトールヴァーゲン
(出典:Wikipedia)

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パテント・モトールヴァーゲン
(出典:Wikipedia)

1903年

ライト兄弟(アメリカ)が12馬力のフライヤー号で260mの飛行に成功した66年後の1969年(昭和44年)、人類はアポロ11号で月面に降り立ちます。
そして翌年の1970年1月からは、450人乗りジャンボ旅客機がニューヨーク~ロンドン間を飛ぶまでに発達しました。

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初飛行のライトフライヤー号。
1回目は36m、観客は5人だった
(出典:Wikipedia)

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ボーイング747
全長76m・全巾69m・乗客最大560人・総重量440トン
(出典:Wikipedia)