家の電気便利帳(冷暖房)
住宅の冷暖房方法の色々
色々な冷暖房方法について、私自身が長年使用した経験からそれぞれの特徴について書きます。一番解ったことは室温をむやみに上げ下げするよりも冷房時には湿度を下げ、暖房時には湿度が下がらない工夫をすること。要するに身体から蒸発する水分(気化熱)の量を調節することでした。
夏場28℃湿度40%なら暑くなく爽やか。冬場18~20℃湿度60%なら寒さ感じず過ごせます。更にこの状態を無風無騒音で実現できると快適性は圧倒的に向上します。一方、維持費は熱源の元が太陽である大気中から吸収するヒートポンプ式はモーター用の電気代が必要なものの熱源がタダの上、地球温暖化ガスの発生も無いのでベストでしょう。
石油ストーブ
反射式・対流式 停電でも煮炊きができ災害時に役立つ
点火するとすぐ暖まる上、直に火が見えるのでより温かく感じられ、寒い室内への帰宅時など、立ち上がりの遅いエアコンと共有すると便利です。火力調整は50~100%のため、ストーブの大きさを部屋の広さに合わせる必要がある上、床面と天井の温度差が大きく(10℃前後)頭が暑くて足元が寒い状況となりますが、写真のサーキュレーターを使えばほぼ同一温度となる上、灯油もかなり節約できます。
40年間、各種サーキュレーターを使用した中でモーターと風の音が気障りでなかったのは写真の三菱AC-90S型でした。シーリングファンは更に静かですが数倍高価です。
使用上の注意点は室内の空気を使って燃焼し、炭酸ガスを室内に排出する為、対策として2時間に5分程の換気が必要なこと、触ると火傷する恐れがあることなどですが、炎が直接見えて注意するため、幼児の火傷の発生原因では10位以下です。また燃焼時には灯油と同量の水を発生するので音の発生しない加湿器としても役に立ちます。壁に取付けた写真の温度計(シンワ測定株式会社製 農業用2700円)では、温度差が11℃もありますが、サーキュレーターを運転すると常時2℃程度に収まることが確認できます。
石油ファンヒーター
温風が部屋中に行き渡るファン付ストーブ。100Vが必要
着火・消火・温度調節などが押しボタン操作と電子化されているので取り扱いが簡単で、火力調整も容易で範囲が広い。コンセントさえあれば移動も簡単
温風の吹出口は熱いのに火は見えないので火傷の恐れは石油ストーブより高い。
室内の空気を使って燃焼し、燃焼ガスも宅内に排出するので石油ストーブと同じく換気が必要なことと音がやかましいのが欠点。燃焼用空気を屋外から吸気し、燃焼ガス(CO2)を屋外へ排出するFF式は換気の必要は無いが移動ができないこと、価格が数倍高いこと、設置工事が必要なことが欠点。
電気蓄熱暖房機
無風・無音・無排気(無臭)な快適暖房
出典:ユニデールカタログ
日中の半額以下の夜間電力で内蔵のレンガに蓄熱し、本体表面(60℃)からの輻射熱で部屋全体を暖めます。低風速ファンで足元からも暖めますが微速なの気づかず、空気を暖めているわけではないので、ドアの開閉による温度変化も感じません。快適性では風の出るエアコンとは比較にならず、1度経験するとエアコンには戻れません。欠点は大きくて重く(300kg)、床置きしかできず、邪魔になる上、暖房にしか使えず融通性が悪いことです。また湿度が低下するので加湿器は必需品です。原発の休止で深夜の電力消費の必要性が薄れた電力会社が推奨しなくなったので普及率は低下していますが、それでも日中の電力単価より35%程度割安です。
ヒートポンプ式エアコン
一般にエアコンと呼ばれている冷暖房機
室内機は壁や天井に室外機は外壁や屋根上に設置できて省スペースで設置工事も比較的簡単。
スイッチ一つで冷暖両方できる上、熱源は外気の温度で燃費がタダで、維持費が安い上火を使わず、地球温暖化ガスの発生も少なく、一番普及している方式です。
欠点は立ち上がりが遅いこと、風が出ることです。また原理上、冷暖房が必要な時ほど性能が低下(外気温-2℃で暖房能力は60%に低下、電気代は6~7割アップ)することです。また、冷媒として使用されているガスは最新型のR32 ガスでも二酸化炭素ガスより675倍もの温室効果を有する為、廃棄時は専門業者に依頼する必要があります。
注)低温(7℃)以下の場合はヒートポンプから灯油ボイラーに切り替わって暖める石油エアコンは石油ストーブ並の立ち上がり早さと暖房能力でヒートポンプ式を圧倒しましたが高額な上、ヒートポンプ式室外機に凍結防止ヒーターが組込まれるなど、暖房性能が向上した結果、2010年頃に各メーカー共撤退しました。暖房の快適性は最新のヒートポンプ式より圧倒的に優れているので筆者は今でも大事に使っています。
室外機には灯油タンクが必要 写真は松下CS-L282A
床暖房
快適性で優れていますが別に冷房装置が必要です
カーペット方式
電気カーペット(ホットカーペット)
出典:https://www.amazon.co.jp/stores/TWONE
速暖性が高くコンセントのある所なら、敷くだけでも使えるので、流し台の足元や座敷などの冷たい床に立ったり座ったりした時の冷温感防止に便利。サイズも数十cmから4畳用まで色々。価格も数千円~数万円で手頃です。欠点はカーペットしか温かくならないので別に暖房器具が必要なこと。快適なので寝入ってしまい、低温火傷にならないよう注意が必要です。
石油ストーブ+温水カーペット方式 (筆者は使用経験なし)
出典:㈱長府製作所サンポット床暖房カタログ
石油ストーブの排気熱で温水を作り、床に敷いた通水パイプのカーペットを温める方式。熱源が石油ストーブなので立ち上がりが早く強力な上、部屋全体を温めるので暖房はこれ1台で済み、FF式なら空気も汚れず換気不要、灯油使用で経済的、寒冷地で多く使用されているようです。欠点はカーペットの片付けが難しいこと、毎日給油が必要なこと、小型機が無いことでしょう。
床板加熱式(一般的な床暖房方式)
(加湿器または石油ストーブによる加湿が必要になります)
床の建築工事も必要なため初期費用はかなり高額になるが、床~天井間の温度差がほぼ均一な上、足裏が暖かいので体感温度はより向上し、風も音も発生しないので20℃程度の室温でも寒さを感じません。他の方式より5~7℃低い室温で済むため、暖房費用も安上がりです。
電気ヒーター式床暖房
出典:北日本電線工業㈱ホームページ床暖房
床材の下にヒーター線を敷設して床材を40℃程度に温めます。ヒーターシートやヒーターパネルの敷設など工法は色々ありますが原理は同じです。熱源が電気のため、ランニングコストは比較的高いがコスト低減と安全については色々と工夫されています。温水式に比べると立上がりが早く工事費も安上がりな上、点検維持費は不要です。
温水式床暖房
出典:三菱電機
室外の熱源機(ヒートポンプ式冷温水発生機)で50℃前後に温めた不凍液を床板(フローリング)の下一面に敷設したパイプに送り床を暖める方式。
熱源は大気中の熱であり必要エネルギーはコンプレッサーを回すモーターだけなので運転コストは安上がりです。1台の室外機で30~50畳の暖房能力がありますが節電の為に個別の部屋ごとの入切と温度コントロールが可能です。欠点は5年に1回程度の不凍液の補充と点検(5~10万円)が必要なことです。音も風もなく快適なうえ、エネルギーコストが安いので気後れせず使えます。
輻射式冷暖房 +(床暖房)
この方式を使うと27~28℃でも暑くなく、20~21℃でも寒くなく、冷房は温度より湿度、暖房は無風であることの大事さがわかります(体感温度が向上する)また本体温度が冷房時は体温が室内に吸い取られるトンネルに入った時のような感覚で、暖房時にはなんとなく寒くない感覚です。上げたり下げたりする温度差を小さくできるので、その分、電気代も安上がりです。パネル温度が10~50℃で幼児が触っても安心、欠点は立ち上がりが遅いことです。このため、筆者宅は同じ室外機で床暖房も併用しています。また初期費用は冷暖エアコンの数倍となりますが、快適性もそれに見合っています。
(注)筆者宅では2012年から独自に三菱製エコヌクールによる床暖房とエコファクトリー製輻射パネルに冷暖房をしていますが組合せには施工業者による電磁弁追加のシステム設計が必要です。また予約の上で筆者宅の見学体感も可能です。今ではメーカーも対応してくれます。
(参照)三菱電機ヒートポンプ式冷温水システムエコヌクール
(見学体験予約)076-441-1114株式会社北陸電設
その他
高気密高断熱にして屋外屋内間の熱の移動を少なくし、快適性を向上させながら、全館冷暖房のエネルギーコストを下げる色々の方式がハウスメーカーから提案されていますが、いずれも新築時でないと施工が困難です。当然、建設費も上昇します。大半の方式は床下に熱源機(室内機)を置き、床と内外壁の隙間を上昇(冷房の場合は下降)する気流によって建物を温める輻射熱方式です。24時間全館を冷暖するわけですから、必要な時にだけ使用する従来の個別の冷暖に比べて快適性は圧倒的ですが常時全館冷暖房のため、個別冷房に比べエネルギーコストが安くなるとは限らないことに注意が必要です。また高気密は室内の換気がかなり少ない(2時間に1回必要)ことへの対策や水分の結露(だから床冷房ができない)やカビの発生対策(結局24時間運転になる)などインターネットで「床下エアコン」と入力し、メリットとデメリットを知っておくことが大事です。